『現代日本の金融システム−金融市場と金融政策−』 第12集 平成17年度版 (平成18年3月発行)

量的緩和政策の政策波及経路と準備預金需要について

打田委千弘


要約

 本稿の目的は,量的緩和政策における政策波及経路についての議論の整理を行った上で,量的緩和期において最も重要な要因の1つである,銀行の準備預金需要関数(日銀当座預金需要関数)がどのように決まっているのかについて推定を行っている.推定結果としては,準備預金需要に対して,短期金融市場の機能低下要因や金融システムに対する不安要因が重要なファクターとなっていることが示されている.また,比較的健全性の低い金融機関は,流動性効果が強く出る可能性を示している.
 これらの推定結果は,量的緩和政策における政策波及経路において,不良債権問題等を始めとする金融機関の健全性の改善が,実体経済活動に重要なインパクトを与える可能性を示唆している.