『現代日本の金融システム−金融市場と金融政策−』 第12集 平成17年度版 (平成18年3月発行)

低金利政策下における金融政策の波及経路に関する一考察

南波浩史


要約

 日銀によって2001年3月に導入された量的緩和政策は2006年3月に解除された。しかしながら、1999年2月から始まった無担保コール翌日物金利をゼロ%に誘導するというゼロ金利政策は依然として続いている。この政策は、短期金利をゼロ付近に近づけるという超金融緩和政策である。本稿ではこうした1990年代後半以降の低金利政策下における、マネーサプライ、ハイパワードマネー、銀行貸出、短期金利、生産等の諸変数間にどのような関係があったのかという問題について、因果性検定を用いた計量分析を行った。
 結論として、ゼロ金利政策導入後、2001年以降ハイパワードマネーは大きな伸びをみせたが、その伸びは、マネーサプライや生産の増加には結びつかないという結果が計量分析によって確認された。また短期金利についても、銀行貸出やマネーサプライへの先行性は観測されないという結論が得られた。