『現代日本の金融システム−金融リテールの経済分析−』 第11集 平成16年度版 (平成17年7月発行)

金融機関の健全性と設備投資について−都道府県データを用いた実証分析−

打田委千弘


要約

 本稿では,金融機関の健全性と設備投資の関係について,都道府県データを用いて実証分析を行っている。主要な結論は,以下の3つである。第1に,製造業において流動性制約を表すキャッシュフロー変数が有意となっている一方,非製造業では有意となっていないというものである。第2に,製造業おいて不良債権比率など金融機関の健全性指標と設備投資の間に有意な関係が見出されたが,非製造業では,一部の結果を除き,有意な関係を見出せなかったということである。第3に,製造業において,県内総生産成長率が平均的に高い都道府県に所在している企業は,平均的に低い成長率の都道府県に所在している企業に比べて流動性制約に直面している可能性が高いということである。