『現代日本の金融システム−金融リテールの経済分析−』 第11集 平成16年度版 (平成17年7月発行)
南波浩史
金融政策の波及経路やその効果の有効性に関する議論は以前から大きな問題となっている。貨幣の機能を重視したマネー・チャンネルと信用の機能を重視したクレジット・チャンネルのいずれが実体経済に対して大きな影響を及ぼすのかという議論である。本稿では貨幣(マネーサプライ)や銀行貸出・短期金利といった金融変数と生産や物価といった実体経済変数の間の関係を、Grangerの因果性テストによって計量経済分析を行った。その結果、1980年代に入り貨幣と実体経済の関係は希薄化したといわれているが、貨幣を通じたマネー・チャンネルの有効性は希薄化したということができず、なおも重要な波及経路であると結論付けられた。また、貸出を通じたクレジット・チャンネルについても、標本期間・分析手法・モデルに含める変数にかかわらず、一貫して貸出から生産への因果性の存在が確認され、銀行貸出を通じた信用経路の重要性が明らかになっている。